少し旬が過ぎてしまったニュースですが、サウジアラビアで少なくない王子たちが拘束されたそうですね。
さて彼らはなぜ自国の政府によって拘束されてしまったのでしょうか。
そこで今回は、サウジアラビアで自国の王子が数多く逮捕された理由を自分なりに深掘りしていこうと思いますよ〜。
メディアの報道では…
メディアでの報道によると今回サウジアラビアにおいて数多くの王子が逮捕された理由としては、次のもの挙げられています。
・反汚職キャンペーンの一環
・皇太子の権力基盤を確立するため
反汚職キャンペーンが実行された理由としては政府の権限を悪用した王子が不正に蓄財し、これはけしからんというということで行われたという説明が多かったような気がします。
また皇太子の権力基盤を確立するために行われたという理由付けについては、字義通りに受け取っていいでしょう。
今回逮捕された王子たちは莫大な財産を持っていたり、精力的に投資活動を行っていました。
こうしたことが皇太子の権力を磐石にするのに邪魔に見えたから粛清されたという話ですね。
また、反汚職キャンペーンで逮捕されたという理由に立っても有力な王子が消えたということは変わりありません。
ですので、反汚職キャンペーンも皇太子にとって邪魔な王族を消すための便利な方便とみなすことも可能だったりしますね〜。
報道からは今回の逮捕は皇太子が自分の権力強化したいから自発的に行ったと考えることができたりします。
つまり、今回の大量逮捕は皇太子サイドが権力をより強固なものにするため、ある意味で攻めに出たといったニュアンスで理解できるということです。
しかし個人的には、今回の逮捕はそれだけでないような気がします。
それは皇太子サイドの権力が弱体化したからこそ、保身のために大量の逮捕を行ったのでは〜と。
その理由としては、皇太子が重大なしかも責任問題として扱えるかもしれない失政を犯していたのではないのかな〜と思えたからですね〜。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は軍事、内務そして治安維持の省庁を把握していました。
そのため彼は国政において様々な権限を行使することが可能となっています。
そして昨今のサウジアラビアでの改革は彼が音頭を担ってきました。
この改革は彼が王位につくための実績作りとも言われていました。(無論成功すればですが…)
実際、ビジョン2030といったサウジアラビアの今後を占う経済政策も彼が重要な役割を果たしていました。
軍事的、外交的に失敗した皇太子
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は先ほど挙げた金融政策以外にも軍事、国防などサウジアラビアの政策に数多く携わっています。
皇太子が進めてきた政策にはラディカルな改革も含まれていました。
例えば女性が車を運転することを認めたりするものなどですね。
サウジアラビアは建国当初からイスラーム教の中でも特に厳格なワッハーブ派と強く結びついてきました。
このワッハーブ派は非常に保守的な宗派として知られています。
ですからポケモン禁止令を出したり、イスラム国と変わんないじゃないかという指摘をされたり…。
実際、サウジアラビアはワッハーブ派を国教としてきたことで
ですから女性に運転を認めることは相当な反発や反感が簡単に予想できます。
しかし、皇太子はそれにもかかわらずこれを行ったのですね〜。
こうなると国内の宗教保守派、また年若い皇太子に権力が集中することが面白くない王族の長老格にとっては皇太子は失脚させるべき存在となるわけで…。
さて皇太子を仮に失脚させたいのでしたら相応の理由が必要となりますよね。
そして、何と相応な理由があったのではないかと思われます。
その理由は皇太子の軍事的、外交的政策における無視できない失敗です!
そこで、その失敗と思える政策を簡単に見ていこうかと…。
イエメンに対しての軍事的介入
その失敗は何かと言いますとイエメンにおける軍事的、外交的な失敗です。
サウジアラビアは2015年からイエメンの内乱に介入してきました。
イエメンの内戦は一言で言えばスンニ派とシーア派のどちらが国内政治のリードをとるかをめぐって起きたものです。
そしてイエメンはアラビア半島に位置していますので、サウジアラビアとしても安全保障上無視できぬものでした。
このイエメンの内戦にムハンマド・ビン・サルマン皇太子が先頭に立って介入していくことになるのです!
介入当初においてサウジアラビアはイエメンを空爆するなどして内乱はすぐに終わるものだと思われていましたが、実際は2017年11月現在まで続いています。
そしてイエメンでの内戦は終わらないどころか、逆にイエメンからサウジアラビアの首都リヤドに向かってミサイル攻撃が行われるなど混乱が深まっていたりするのですね。
安全保障を確保するために始めた介入が、逆にサウジアラビアの安全保障を揺るがしたとはなんとも皮肉なことです。
またサウジアラビアが中心となって行ってきた空爆では、イエメンの民間人が犠牲になっていました。
このような空爆は人道的に問題があるとして同盟国のアメリカは、民間人に犠牲が出る空爆に対して非難をする声明を出していまして…。
サウジアラビアの国防はアメリカの軍事力に大きく依存しています。
しかし、アメリカとの同盟関係は9.11以テロ降怪しいものになっていました。
テロの実行犯のほとんどがサウジアラビア出身でしたので…。
さらにイランの核開発の進展などサウジアラビアの国防に危険性が高まっている中で同盟関係に緊張をもたらす行為は嬉しいものではありませんよね〜。
皇太子が先頭に立って行ってきた介入が、アメリカからの非難をもたらしたとなれば外交的な大失敗を犯したと十分に言えるでしょう。
こうしたことは、反皇太子派にとって皇太子を失脚させるには格好のネタとして映っても不思議ではありませんね〜。
今回、皇太子が先手を打てた理由
さて失敗を犯した皇太子が自分が潰される前にライバルを潰せたのは、やはり皇太子が事前に国内の権力を掌握できていたからでしょう。
ここで皇太子は自身の政治権力を揺るがさせないために、今回のクーデターとも思える逮捕劇があったのでしょう。
また現在サウジアラビアはカタール、そしてイエメンとの関係が悪化しています。
それだけでなくイランとは犬猿の仲ですし、イラクもシーア派が国民の多数を占めるので関係が怪しいものになっています。
そしてレバノンではスンニ派とシーア派(さらにキリスト教徒も)の間で対立が過熱しています。
このようにサウジアラビアは近隣諸国とも関係が悪化していたり、危機的な状況に陥っているケースもあったりします。
こうした状況下で、サウジアラビア国内で王位継承を巡っての混乱が起きれば大変なことになるでしょう。
ですから皇太子は自分の地位を固めるとともに、対外政策への不安も解消しようとしたのではないのかな〜なんて考えたりします。
逮捕された王子たちの財産のの行方
今回逮捕された王子たちは莫大な資産を保有していました。
こうした資産はおそらく政府が接収することになるはずです。
そして莫大な資産を接収することで、政府=皇太子は自由に使える資金が増えるというわけですね。
おそらく接収された莫大な資金は皇太子の地盤を一層強固なものにするため皇太子の支持者に分配されることになるでしょう。
資金が配分される王族は現皇太子を支持するので、皇太子の権力は一層安定するでしょう。
また、王族内でも有力な王子が消えれば自分の地位や影響力が拡大する可能性があるとして今回の逮捕を歓迎するグループが出るかもしれません。
つまり皇太子としては今回の逮捕劇は、王族内での内紛の危機もあるけれども自分の支持基盤を強化できるかもしれないという賭けに出たともみなすこともできたりします。
今回逮捕された王子は今の所11人ですが、まだまだ増える可能性もあります。
しかし、逮捕者がこれ以上増えても問題はないはずです。
(王族だけでも数百人いるので逮捕された王子の替えは結構、簡単に効くでしょうし)
ただ、今回の逮捕劇で失敗すればサウジアラビアのみならず中東はより混乱することが容易に想像できます。
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