20日にドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任するわけですが、彼の就任によってアメリカの政治は大きく変わっていくという見方が多々あります。
その変化の中でも中東に大きな影響を与えそうなのが、彼のイスラエルに対する姿勢です。その姿勢はパレスチナ問題にも間違いなく影響を与えるでしょう。
そこで、トランプ氏の政策がどうパレスチナ問題に影響を与えていくかを考えていこうかと…。
二国家共存論があった
まず、トランプ氏の対イスラエル政策を俯瞰する前にイスラエルとパレスチナの関係を見直していこうと思います。
イスラエルでは、パレスチナ人がイスラエルに対してインティファーダと呼ばれる抵抗運動を起こしていました。インティファーダの原因はパレスチナ人の土地にイスラエルが入植を拡大し続けていたからです。
自分のものとされている土地を勝手に占領されれば誰だって反感や怒りを覚えるものですよね。
(インティファーダについて詳しくはこちら)
さらにイスラエルが建国される際にはパレスチナ人の土地がイスラエルの国土になった過去もあり、パレスチナ人のイスラエルに対する不信、反感は相当大きなものになっていました。
こういうわけで、パレスチナ人はイスラエルの強引な入植の継続にとうとう我慢できなくなり、時には暴力の行使も含んだ入植反対運動インティファーダを1987年から繰り広げたのでした。
これに対してイスラエルはインティファーダを徹底的に弾圧することで押さえつけを図りました。
ですが、双方とも暴力の連鎖に疲弊し平和的な解決を求める声が大きくなり…。パレスチナ問題の解決のために1993年にオスロ合意が結ばれることになるのです。
この合意の中身は簡単に説明させてもらうと…。
パレスチナ側はイスラエルの存在を認め、テロ行為を行わない、一方イスラエルはパレスチナを一応国家的な主体であると認め、入植力撤退を暫時進めるというものでした。
オスロ合意まではパレスチナはイスラエルの存在そのものを認めないという立場であり、イスラエルもパレスチナを交渉相手とみなしていませんでした。
ですが、オスロ合意によって双方が相手の存在を承認し話合いをできるまでに関係を改善したので画期的なものだったのです。
ただ東エルサレムの帰属を棚上げにするなど大きな将来に課題を残すものでした。
こうしてイスラエルとパレスチナは問題を残すものの二国家平和共存として一応の平和を享受することになったのです。めでたし、めでたし。
(パレスチナ問題に突っ込んで調べた記事はこちら)
もろすぎた平和
オスロ合意が結ばれたことでイスラエルとパレスチナは初めの頃は、双方とも平和になると友好ムードを喜んでいました。ですが次第にどちらも相手に対して不信を抱くようになっていきます。
理由としては、パレスチナにとってイスラエルが入植地をなかなか返還しないことに不満を感じるようになり、またイスラエルではパレスチナがテロ行為を止めさせることができていない事実に怒りを覚えるようになったからです。
こうした中で、のちにイスラエルの首相になるシャロン氏がエルサレムにあるアルアクサー・モスクというイスラームの聖地を訪れたため一気に問題が爆発します。シャロン氏がアルアクサーを訪れたことがパレスチナ人にとってはただの挑発にしか見えなかったため第二次インティファーダが勃発することになったのでした。
イスラエルとパレスチナの関係が悪化する中で9.11が起こり、これが双方の友好ムードに止めをさす形になってしまいました。
こうして、イスラエルとパレスチナは平和への道が閉ざされた状態で今に続いているのです。ただし米国大統領の仲介などがある場合には話合いが持たれていましたが、平和的解決には程遠い状態のままなのですね。
ドナルド・トランプの中東
さて、ここからが本題。トランプ氏は中東問題にそしてパレスチナ問題にどう対処していくのか考えていこうかと…。
トランプ氏は周知の通り選挙中からアメリカ第一主義を唱えてきました。(例えば工場をアメリカ国外に建てる企業に大幅な課税をするとか、TPPには参加しないなど財政的なものから。メキシコの国境に壁を作るとかムスリムの入国禁止などの過激な主張までしていますよね。)
そんなトランプ氏は中東問題からもさっさと手を引きたいようです。(ただし、オバマ政権も中東から手を引いていた事実があります。シリア内戦のグダグダを見ればそれがよくわかるかと…)
トランプ氏は内戦が続くシリアについてはアサド政権の存続を認めるような態度を取っていますし。
ですが、イスラエルについての話は別です。
なぜかと言いますと、トランプ氏はイスラエルの首都はエルサレムであるという主張を認めるような態度が見え隠れするからですね。
これが何を意味するかと言いますと…。
今までアメリカを含めた世界各国はエルサレムをイスラエルの首都だと認めない態度を取ってきました。
イスラエルの建国が決まった国連のパレスチナ分割案でもエルサレムはイスラエルのものではないと保留があり、実際には西エルサレムはイスラエルが、東エルサレムはパレスチナが領有する形もありました。
なので、どの国もエルサレムはイスラエルの首都ではないとしてきたのですね〜。またエルサレムをイスラエルの首都だと認めてしまえば国民から突き上げを食らう可能性がある国家もあったので、とにかくエルサレムは首都であるという主張を拒絶してきました。例えばイスラーム諸国、エルサレムはユダヤ教だけではなくイスラーム教の聖地でもあるからなのですね。
しかし、ここで問題になるのが今まさに話題になっているトランプ氏。
彼は先ほど述べたようにイスラエルがエルサレムを統一し首都とすることを認めるような態度を匂わせているのです!
もし、トランプ氏がエルサレムをイスラエルの首都と認め大使館を移すようなことが本当に起きれば大きな問題が発生するでしょう。(ほとんどの国の大使館はテルアビブにありますよ〜)
まずパレスチナ人の間にはイスラエルに対しての抵抗運動をより過激なものにしようとする勢力の影響が拡大する可能性があるだけでなく、アメリカそのものを敵対視する人が増えるでしょう。
それだけでなく、エルサレムを統一し首都として認めることは、今まで築き上げられてきた国際法を無視する形になります。
つまりトランプ氏がイスラエルの主張を認めた場合には第二次大戦後アメリカが作ってきた一応の平和体制(暴力によって現状の変更を許さいない体制)を、自らの手で終わらせることを意味するのですね〜。
こうして、トランプ氏のエルサレム承認とともに暴力によって現状の変更が許容されうる世界になったりするかもしれませんね。
トランプ氏の中東政策は中東地域だけでなく、世界中に大きな影響を与えるのは否定できないでしょう。
日本は大きく移り変わる世界でどう生き残っていけばよいのでしょうね〜。
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