トルコでクーデタが起きたワケ

      2016/07/18

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トルコで、軍がエルドアン政権に対してクーデターを起こしたそうです。

なぜにトルコ軍はクーデターを起こしたのでしょうか?

その理由を探っていこうかと。

トルコ共和国の成立

今回トルコ軍がクーデターを起こしたワケを知るには近代トルコの成立とその建国の精神を知る必要があります。そこで、まずはトルコの歴史を軽~く見ていこうかと。

今のトルコの前身であったオスマン帝国は、かつてはハプスブルク家(神聖ローマ帝国の皇帝を輩出した、ヨーロッパの超名門貴族)の本拠地ウィーンを包囲するなどしてヨーロッパ諸国から非常に恐れられていました。しかし、産業革命によってヨーロッパ諸国が近代化していく中、オスマン帝国はそれができずに相対的に弱体化していくのでした。その結果、度重なる露土戦争、ギリシア独立戦争で領土を次第に縮小し、ヨーロッパの病人と呼ばれるまでになったのですね。

 

その後オスマン帝国は第一次世界大戦で再起を賭けるのですが敗戦。こうして帝国は崩壊したのでした。帝国が崩壊していく中、一人の男が現れます。その名はムスタファ・ケマル。彼はもともと帝国の将軍だったのですが、皇帝が領土の大部分を失ってまで降伏しようとしたのに反対し、独自に連合国と戦い領土を奪還しました。その後、彼は帝政を廃し、現在のトルコ共和国を建国するのでした。

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トルコ共和国の国父。ムスタファ・ケマル

 

ケマルはかつてヨーロッパを圧倒した帝国が、ヨーロッパに諸国に完敗したのは宗教(イスラーム教)にあると考えました。かつてオスマン帝国はヨーロッパに追いつこうとして様々な改革を実施したりしたのですが、宗教色が強い保守派がそれに反対したため改革はついえてしまったのです。

宗教が政治に口を出したから帝国は崩壊し、共和制国家のもとでもそれが起きたらたまったもんじゃないと考えたからでしょうか、ケマルは政教分離をトルコ共和国の国是に据えるのでした。(この際、ケマルは憲法からイスラーム教を国教とする条文を削除したり、トルコ語で使われていたアラビア文字をアルファベットに置き換えるなどして新制国家から宗教色を徹底的に追放したりしたんですね。)

 

さて、ここで重要になるのが軍なのです。軍隊はケマルの出身母体であったためか、自分たちは共和国の国是である政教分離の守護者だと自負するようになりました。これが今回のクーデターにも関係があるのです!

イスラーム教の復権

さて、トルコは共和制になってからケマルの理念に従って宗教的(イスラーム教的)なものは追放されるか、完全な国家の管理に置かれるようになりました。ですが、国民の多くがイスラーム教徒(ムスリム)であるから、これまでにときどき政府が宗教色のある政策を実施しようとしました。ですが、これらは全て失敗してきました。なぜか?その理由はもう分かっている人もいるかもしれませんが、軍隊が邪魔してきたからです。

政府が宗教色のある政策を施行しようとすると、軍はあの手この手を用いてそれを破たんさせてきました。時にはクーデターまで起こしてまで。軍にとって国父ケマルが示した政教分離は絶対的なもので、それを揺るがすものは自分たちが排除しなくてはいけないと信じていたからです。

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このようにトルコではイスラーム的なものを政治の場で示せば、軍によって潰されてきました。しかし、2002年ごろから変化が現れるのでして。

それは現在の大統領エルドアンが率いる公正発展党が政権をとったことです。公正発展党はイスラーム色を出していたからです。(例えば、女性がスカートをつけることは禁じられていたのですが、それを任意にしたりとか)国民も行き過ぎた政教分離に嫌気がさしていたから公正発展党が支持されたのでしょう。

こんなことしたら、軍に排除されるのではと思う人もいるはず。ですが、エルドアンは軍がクーデターの準備をしているとして多数の将校を逮捕し、軍を掌握しました。これによってエルドアンは軍から排除される危険がなくなったはずでした。

 

なぜ、クーデターが今さら起きたのか

ようやく本題なのですが、一部のトルコ軍はなぜクーデターを実行したのでしょうか?

これには複数の理由が考えられます。

まず、一つはエルドアン大統領が強権的な政治を行っていることです。大統領は自身に反対するジャーナリストなどを拘束することがしばしばありました。世俗主義を重視する人にとってはイスラームを重視するエルドアン大統領によって、トルコが世俗主義を捨ててしまうことになるのではないかと危機感を抱いていたことです。

 

もう一つの理由は、国内の混乱です。エルドアン大統領はISや隣国のアサド政権と対立していたためか、トルコでは今年に入ってからISのテロ攻撃が増加しました、国民からエルドアンが大統領だと安全が守れないのではと疑問に思われた点もあるからでしょう。(仮に軍のクーデターが成功していたら大義名分の一つに利用できたでしょうから。)

(関連記事です!よければ読んでみて下さい→ 3分でわかる!?トルコの空港テロの裏側 )

以上のように強権政治への反発と国内でテロが止まないことに不満を持った軍人がクーデターを起こしたと考えられますね。

 

今回のクーデターで対ISや難民問題で大きな役割を担っていたトルコが大きく混乱したことは、一層これらの問題をややこしくするでしょう。

以下の記事で、今回のクーデターの黒幕とされるヒズメト運動を紹介します!

→ 3分でわかる!?ヒズメト運動

 

 - トルコ, 中東